2011年12月6日火曜日

「生と死の医療現場で考えさせられたこと」20

チーム医療について

医療現場は一昔前に比べ大きな変化が見られます。その一つがチームで医療を推進させようという動きです。患者中心の医療を目指し、医療の質を高めるためです。

現代の多くの病院では、患者を中心に医師、看護師、薬剤師、栄養士、MSW(ソーシャルワーカー)、理学療法士など専門性の異なる多職種間で協働(連携するという意味)するという形で運営されつつあります。これにキリスト教系病院などではチャプレンが、緩和ケア・ホスピスでは臨床心理士やボランティアも入ります。さらに、病院外の関係医療機関(開業医、訪問看護、ヘルパーなど)との協働まで含みます。このようなチームは多職種チーム(multidisciplinary team)と呼ばれます。

一人の患者にとってそのときそのときの心配事やニードは変化します。あるときには医療費のことでMSWの介入が必要になり、あるときには食事管理のことで栄養士の指導が求められ、あるときには理学療法士によるリハビリが始まります。病人の心配事やニードに対して全体的に応えることによって病院は患者の信頼を得ることが出来るのです。キーワードは連携という言葉です。

もう一つのチームに合同チーム(interdisciplinary team)があります。このチームではカンファレンスを開き、リーダーの医師を中心にそれぞれの多職種のメンバーがそれぞれの専門領域からの意見を交換し合い、患者にとってどのような治療やケアが望ましいか、QOL(生活の質)向上に向けて何が求められているかなどを話し合います。すでに緩和ケア・ホスピスや一部の癌治療の現場で実践されています。

このチームでは医師はチームメンバーの意見を謙虚に聴く耳をもち、患者にとって今何が最善かを判断できる高い見識をもたなければなりません。他のメンバーも医師の指示を待っているのではなく、必要ならば自らリーダーシップをとって自分から意見を言ってチームに働きかけるべきだとされています。

チームは問題解決に関しては単なる共同体組織よりもずっと効果的です。アメリカのがん治療の最先端の病院では、カンファレンスにこだわらないで電話でのコミュニケーションで患者の最善なことを決めることもできるようにしているようです。日本の組織は会議が多く、会議をしないとコミュニケーションがとれない傾向があるのではないでしょうか。

チームを築いていくための必要な要件は、「問題の明確化」、「問題の共有化」、問題解決への「行動の積み重ね」、チームメンバー間の「信頼関係と支え合い」だとされています。

これに対して障害となる要件は、チームの中での力関係、すなわち「パワーバランス」が偏っているときです。リーダーシップをとるメンバーの決定権などが強すぎるとパワーバランスが崩れて他者に心を開きにくい雰囲気が生じます。それと、多職種にはそれぞれの専門領域の価値観や文化があって他に対して排他的になったりする場合です。自分の現場から問題に取り組めば取り組むほど、周りがみえなくなったりすることがあるのではないでしょうか。

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